副業や独立開業をすすめた後、初受注や見積もり依頼って嬉しいですよね。でも真っ先に困るのは「この仕事いくらで受注したらいいんだろう」と言う話。
今回はそんな「価格設定をどうしたらよいか」について、独立開業のリアルビジネスがどうなっているか、という経験談をお話しようと思います。
値決めは「対価」であって「時間給」ではない
仕入れ商売なら、粗利率を設定して上乗せすればいい話ですが、
自分自身が作業するような人にとっては、
- ホームページの制作・デザイン
- 画像や絵の制作・デザイン
- SEOやTwitter集客の指導・コンサル・相談
- ライティング・リライトなどの書き方講座
など、相場観がわからずに、「安く受注」してしまったり「高すぎて、失注」してしまったり、「価格設定」はとても悩む問題だと思います。
なにより、副業や独立開業は、「時間給の独立」を目指すわけではなく、「価値に対する対価」を得るためにはじめたわけですし、「時間給の計算」でやり続けていたのでは、受注の増加とともなって、忙しさも増える一方で、結局の所「会社員給与と働き方が変わらない」というオチに行き着いてしまうのです。
だから、「提供価値」が「いくら」の相場観であり、そのためにかかるコストと時間から「いくらにすべきか」は戦略的に考えなければ、あなたは時間の奴隷に陥ることになるのです。
まずは「原価計算」から、コストを算出する
仕事の原価にはいくつかの要素があり、それらを加味して、売価が設定されなければ「受注するほど赤字」に陥ることになります。
- 人件費:どのぐらい時間がかかる作業なのか(=これが唯一時間給的要素)
- 固定費:(パソコンや道具、ソフトウエアなど)必要なものの費用を1受注あたりに直して設定
- 変動費:その受注内容に応じて発生する費用(印刷や紙などの消耗品、時間がかかる分の電気代)
これらを加味して、おおよその「原価」を設定しておきます。
例えば、
人件費は、月額50~100万円ベースがハイエンド人材の基本給と考えて、
[基本給50万円と設定]
月20日間の稼働、毎日4時間の労働と考えれば、
時給単価の計算は
50万円/20日間=25,000円/1日
日給25000円/4時間労働=6,250円/時給
ということは、時給単価が6,250円×何時間かかる作業なのか。
例えば、絵を書く仕事なら、
企画30分、作画2時間なら、
6,250円×2.5時間=15,625円(約16,000円)と設定すればいいですね。
人件費:16,000円
それに、パソコンやソフトなどが、全部で80万円ほどかかったとすれば、
これを2年で償却するとして、
80万円/24ヶ月=33,333円/1ヶ月
1ヶ月の受注件数ですが、10件ずつとして、
1ヶ月33,333円/10件=1件あたり固定費3,333円(約3,400円)と設定できますね。
固定費:3,400円
最後に変動費ですが、紙やインク、印刷のトナー代などですが、
世の中のカラーコピー代金が、カラーで100円の時代ですから、
テスト印刷や失敗も含めて、500円としておきましょうか。
変動費:500円
そうすると、
人件費16,000円+固定費3400円+変動費500円=1枚作画費用19,900円
となるわけです。これに付加価値としての利益を載せて、はじめて「付加価値労働」ができるという話ですね。
サポーターが徹底支援。キャリアサポートサービスの「クラウドテック」利益をいくら載せたらいいのか?
世の中で販売されている商品やサービスの粗利率は様々です。例えば、スーパーでお菓子や飲み物の販売する利益率は、安くて2%~15%ぐらいなど低く、生鮮品や惣菜加工品などは40~60%ぐらいのものもあります。
理髪店やマッサージ、リラクゼーションなどは、人の手が主となる労働原資になるので、7割~8割ほどの粗利になることもあります。
したがって、粗利をいくらにするかは、自由といえば自由ですが、物販出ない限り、アイデアやデザインなど人の「頭」が労働原資となる場合は、
- 風邪や体調不良など、健康理由で仕事ができなくなるリスク
- 情報収集や勉強など、作業時間外に必要なインプットなど見えない時間のコスト
- 人の価値ゆえに受注率や件数が少なくなるための待機や空き時間のコスト
- 告知や宣伝、PRなどにかける費用や時間に対するコスト
などを加味すると、3割~6割ほどは原価に対して上乗せしておくのが、適正価格といえる値付けとなるでしょう。
そうすると、1万円の原価なら、6割乗せれば、16,000円の売価
さきほどの、作画で19,900円の原価であれば、6割乗せは、31,840円となり、
およそ32,000円~35,000円が妥当な値付けと言えるでしょう。
あとは、これを受注決定となるような「価格」と「品揃え」で「価格の納得性」をどうやって説明するかにかかってくるのです。
価格は「ワンプライス」ではなく、時間と量で選択幅を持たせる
さて、値段がきまりましたが、その商品だけを提供するのでは、お客様は「価格の妥当性」について深く考え始めてしまい、受注そのものや仕事そのものの価値について吟味をはじめてしまいます。
これを回避するには、仕事の「時間」と「量」で、商品ラインナップを増やし、お客様に「条件による比較」で悩んでもらうのが適切です。
例えば、
量の比較:1枚作画なら、35,000円。3枚セットなら94,500円(10%OFF) ※単価31,500円
時間の比較:通常1週間仕上げのところ2週間待ちなら、33,250円(5%OFF)
これをマトリックスにすると、
2週間納期 | 1週間納期 | |
1枚 | 33,250円 | 35,000円 |
3枚 | 設定無し | 31,500円 (総額94,500円) |
こうすると、お客様の比較は、
納期を遅くして安くするか、
枚数を多くして単価を下げるか、
という比較になるため、
「仕事自体を値切る」という交渉を除外することができるのです。
枚数が増えて値引くのは、仕事の受注数を増やすメリットを価格に反映しているのですし、納期が遅くなるのは仕事が立て込んだときのリスクヘッジにもなります。
このように、「自分の仕事の価値」を決め、お客様が価格について悩むのは、
「提供価値以外」の「機会価値」に比較検討が向くような商品ラインナップにする
ことが、賢い価格設定といえるでしょう。
また、安すぎる価格設定をすると、今度は「受注増」が続き、処理できるキャパシティを超えてしまうので、「受給調整」という点でも「値決め」は大変重要であると理解しておきましょう。
この価格設定後に受注数が増えたり、1週間の納期を3日で急ぎでやってほしい!という依頼が来るように慣れば、「特急料金で、定価×2倍」などすることもできますし、値上げではない形での「売上増」が見込めるようになるのです。
クラウドでのフリーランス委託を受注する仕事は、どんどん値下げ圧力高まっていますので、「価格だけで選ばれるフリーランス」にならぬよう、戦略的かつ価格の理由をちゃんとつけて、対等に交渉を進めていきたいものです。
そして大事なことは、「仕事」が「受注」を呼ぶようにすることであり、「営業」に時間を割いているようでは、あなた自身の価値は「低い」と言わざるを得ないということ。「自分の仕事の質」を高めるインプット量、アウトプットの質には、強いこだわりを持って取り組むことが、フリーランスとして生き残っていく上で必要な心構えだと強く思います。
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