論理的=一貫していること
かつて、小論文の採点のしごとをしていたことがあるのですが、年間何千枚もの答案をみていくわけですね。そうすると、多くの人が「間違える=出題の意図にあっていない」ポイントというものがあるわけで、その1つが「3つのズレ」なんですよね。
小論文で間違える3つのズレ
- 「主語」と「述語」のズレ
- 「主張」とのズレ
- 「使い方」のズレ
それぞれ、詳しく解説してみましょう。
その①「主語」と「述語」のズレ
これが一番多かったんですけれど、自分の主張として「私は~と思う」と書いていながら、引用や他人の意見の「政府は~」とか「高齢者は~」という風に違う立場の主張を書きつつ、述語が一致しなくなるってやつです。
「友人と次の旅行にいく話を誰かに伝える」という時
友達は、今度の夏休みにキャンプに行きたいと言いました。
私は、せっかくの夏休みなので、海に行こうと言いました。
友達は、キャンプ以外行きたくないとわがままなのがイヤです。
【減点される書き方】
さて、ここでなにが問題なのでしょう。マーカーで、主語と述語の関係を目印つけてみます。
友達は、今度の夏休みにキャンプに行きたいと言いました。
私は、せっかくの夏休みなので、海に行こうと言いました。
友達は、キャンプ以外行きたくないとわがままなのがイヤです。
【減点される書き方(マーカー付き)】
1番目の文、友達の「主語」と「述語」はピンク色で一致しています。
2番目の文、私の「主語」と「述語」は青色で一致しています。
3番目の文、主語が「友達は」ですが、述語は「イヤです」と私が主語になってしまっています。
このような形で、文をすすめる中で、他人の状態と自分の気持ちや考えが、混ざってしまうことを、「主述(しゅじゅつ)」のズレとして、採点する上では「マイナス」の減点対象となってしまうのです。
しかも、致命的なのは、こういう文章を書いてしまうところで、すでに論理的文章を組み立てられない、という評価となり、あとの文章はほとんど見ずに低い点数がつけられてしまうところです。小論文のスタートラインにさえ立ててないというのは、もったいないところでしょう。
友達は、今度の夏休みにキャンプに行きたいと言いました。
私は、せっかくの夏休みなので、海に行こうと言いました。
【減点される書き方→修正版】
友達は、キャンプ以外行きたくないとわがままなのがイヤです。
↓
私は、 キャンプ以外行きたくないとわがままをいう友達がイヤです。
では、どういう書き方にすればよかったのでしょうか。
文章と主となる主語は「私」です。「イヤ」という気持ちを持つのは「私」であり、「友達」ではありません。
友達は、「わがままを言う」という関係で、主語と述語の関係で組み合わせるべきであり、そのため、「キャンプ以外~わがままをいう」のあとに「友達が」を入れることで、内容を友達に形容(説明)することができるのです。
主文の主語+形容詞 →副文の主語 +主文の述語
もちろん、「私は、友達がキャンプに~」と主語と先に入れることも可能ではありますが、
主文の主語+副文の主語+形容詞(副文の述語)+主文の述語
↑このあたりに主語が続いてしつこい印象
主となる主語と、副となる主語は連続して出てくると、同じ語彙が続き、意味が読み手にわかりづらくなることと、「友達が」を強調することができるため、後ろにもってきたほうがより「感情」を強調させることができるでしょう。
その②「主張」とのズレ
次に、「主張」についてですが、これは、Aという立場で話しながら、Bという立場にもなり、結局何が言いたいのか、わからなくなってしまうということです。
例えば、「ゴミ処理場」の建設に賛成、反対の意見が論点だった文章で、
私は、増え続けるゴミを自分たちで処理するため、ゴミ処理場を建設すべきだと思う。
[賛成の立場]街の公園に育って木を倒してまで、ゴミ処理場を建設するのは反対するというのも正しいと思う
[反対の賛成]木を育てるまでは何十年もかかるので、街の公園は維持するべきだと思う。
[主張のズレのパターン]
こういう上記のような展開をしてしまうのです。たぶん、「ゴミ処理場を建設すべき」と賛成派の考えを持っていると思うんですが、次の文で「木を倒してまで」と反対派への賛成や共感まではいいと思うんですが、最後に「街の公園は維持すべき」と、
話が「ゴミ処理場の建設有無→街の公園維持」
に主張がすり替わってしまっているのです。論述すべき課題からズレてしまうのも、減点対象です。おおよそこのような受験生の場合は、「主張したいこと」が本人にあり、課題や問題よりも「主義主張が強い」人に多い間違いです。自分の立場や主張ばかりで、客観的な視点にかけるということで、少し冷静になって、「聞かれていることに答える」よう注意する必要があります。
学校の委員会やクラス会でも、その場で議論すべき内容からズレた発言をしてしまう。まさにそれを小論文でやってしまうと、せっかくのいい意見や主張であっても、「それは今、言うべきことではない」と点数をとることができなくなってしまうのです。
その③「使い方」のズレ
最後に「使い方」ですが、小手先の小論文テクニックか何かを学んで、とにかく「あのフレーズを言いたい」がために、前後の関係性や、課題との関連性を抜きに「フレーズ」だけを入れたがるというものです。
例えば、チームワークを称する表現として
「One for All、All for One」
一人はみんなのために、みんなは一人のために
というものがありますが、これをチームワークや結束のためのフレーズとして小論文で使いたいという意識ばかりが働いて、
地球温暖化対策は、「One for All, All for ONE」だ。
というふうに最後にかかれていて、結局、「地球温暖化」に対してどのようなアクションや解決策にするか、が書かれていないわけです。「一致団結」って精神論なわけで、姿勢や気持ちはもちろん大切な要素ではありますが、それが「主」では無いわけです。
したがって、小論文の参考書などに「参考フレーズはこれだ!」みたいなものが乗っていることがありますが、それは全く参考にならないので、無視しましょう。小論文対策はそんな「フレーズで乗り切れる」ものではないです。
あなた自身の考え方を、客観的に論じることができるか、という論理的思考のスタートラインを問うているのが「小論文」という科目なのです。ということは、上記のような間違いとなる「ズレ」をやらないだけで、文章は成り立ち、結果として「高得点」を誰でも狙えるのです。
いま、身につけてしまえば、大学での論文はおろか、社会人にでても「文章を書く」ことが苦手にならないスキルが「論文(ライティング)」ですから、がんばって得意科目にしてしまいましょう。
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