何かと話題の持続化給付金ですが、対象となる売上減少が「事業所得」と限定されていたために、フリーランスで「雑所得」や「給与所得」で申請していた人は対象から外され、仮に申請できたとしてもそれを証明するための説明や添付資料に奔走する必要があるという大変使いづらい制度になっていました。
インターネットなどで個人を相手にサービスを展開するフリーランスや、ピアノ講師などの専門性が高い個人事業主は、収入を「雑所得」や「給与所得」として申告するケースが多いため、対象から漏れていた。
2020年5月22日 毎日新聞「持続化給付金の対象拡大 経産省が中小企業・フリーランスへの追加支援策」
この度、政府の第二次補正予算案(6月中旬国会成立目標)に、これらの対象を含める施策が追加されることとなりました!
「雑所得」や「給与所得」だったフリーランスの確定申告書
持続化給付金の給付対象については次の2つの要件がありました。
- 2019年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業継続する意思があること。
- 2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(以下「対象月」という。)があること。
要件に記載されている「事業収入」というのがネックで、フリーランスの方で、所得を「雑所得」や「給与」で確定申告をしていた人は対象から漏れてしまっていました。しかも、これら「雑所得」への記載は、個人の自由というよりは、税理士や税務署でのアドバイスなど、公な立場の見解に基づいていることが多く、「なんで納税に従ったのに対象外なんだ!」という意見が多数寄せられていました。
こうした声を受けて、収入の範囲の拡大が今回の第二次補正予算案において、実現することとなりました。確定申告書の欄でいうと次のようなになります。
これまでは水色の範囲の「事業所得」が持続化給付金の売上減少における対象でしたが、紺色で記載している給与や雑所得も、売上減少における収入の対象となりました。
ただし、ここでいう収入は「本業」であることの条件は変わっておらず、副業で転売していたり、趣味で雑貨を売っていたりといった「副業」に関する雑所得では、認められないという立場は変わりません。
雑所得は、ネットでの私的な中古品販売による収入や講演料などの副業収入も含まれ、本業収入だという判断が難しい。そこで、経産省は「雑所得」や「給与所得」であっても、業務委託契約書や源泉徴収票によって、本業収入であることが証明できた場合には給付金を支給することにした。
2020年5月22日 毎日新聞「持続化給付金の対象拡大 経産省が中小企業・フリーランスへの追加支援策」
しかも、「雑所得」や「給与」を売上減少の対象とするには、それが本業であることを示すための書類が必要となり
- 業務委託契約書(契約期間、金額が記載されていること)※印紙貼付け忘れなきように!
- 源泉徴収票(講演や出演などで、支払元から発行される源泉徴収票)
といった書類による証明が必要となります。きちんと確定申告をされている方であれば、特に問題はありませんが、副業や不正による申請が増えることで、確認の手間によって受給が遅れるようなことが無いことを祈るばかりです。
今回の助成金、当初の混乱もありましたが、時間はかかりますが比較的前向きに対象と検討いただいているというケースも聞きますから
- 「日次」と「金額」と「相手先(収入元)」が記載されている書類
- (できれば)委託契約や覚書などの契約書
など、客観的に説明できる書類をもって、申請にあたるのが好ましいでしょう。
2020年創業も売上減少の対象になりました
なお、このうち「2019年以前から」という要件が緩和され、今年度(2020年創業以降)についても第二次補正予算で対象になることとなりました。
今年1~3月に創業した企業で任意に選んだひと月が、1~3月の月間売上高の平均と比べて半減していることなどを条件
2020年5月22日 毎日新聞「持続化給付金の対象拡大 経産省が中小企業・フリーランスへの追加支援策」
創業直後に、コロナウイルス感染拡大を受けて、いきなり事業がストップ!なんていうのはもはや不運としかいいようがありません。でも、今回の持続化給付金では、2019年度の売上が比較対象とされていたので、こんなもう宝くじが当たるかどうかぐらいの不運を受けた創業間もない事業主が対象から漏れるなんて・・・ということで、第二次補正予算案でも、これらの「新規創業」が対象範囲に含まれました。
で、いつから申請可能なの?
これらの持続化給付金の対象拡大にともなう申請は、第二次補正予算が通過した後に受付開始となります。
安倍晋三首相は14日夜に開いた政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で、2020年度第2次補正予算案の編成を関係閣僚に指示した。家賃支払いが困難な中小企業や生活の苦しい学生などに向けた支援策を盛り込む。27日をめどに閣議決定し、6月17日までの今国会中の成立を目指す。
2020年5月14日 日本経済新聞 2次補正予算案、27日にも決定 家賃や雇用を支援
日程でいうと、閣議決定の後に、国会審議となり、国会で予算案が通過した直後からとなりますので、早くとも6月中旬ごろに申請が始まるということになります。
ということは、申請から受給までをスケジュールにすると次のようになります。
対象日 | 日付 |
申請開始日 | 6月中旬(6月17日迄に成立目指す)▶6月18日申請開始? |
振込日 | (申請から2週間とすれば)最短で7月2日(水)~4日(金)あたりか |
ただし!今回の申請は「書類確認」に手間がかかることが予想され、申請者が増えれば、受給の目安となっている2週間を大幅に超える可能性も出てきます。申請から1ヶ月ぐらい先に入金というぐらいの覚悟で、資金繰りを考えておくほうが良さそうです。
日本政策金融公庫のコロナ特別融資や、銀行窓口での受付がはじまった制度融資、セーフティネット保証による融資と、今は資金繰りが平気だとしても、この5月末、6月から企業の資金繰りが悪化することで、連鎖的に影響を受ける可能性もでてきます。金利は利子補給される場合が多数でていますので、使わなければ後日返済するというスタンスで、「借り入れ」による資金の積み上げをしておくほうがよいでしょう。
楽器の指導をしているフリーランスの演奏家などは、複数箇所で演奏の指導を個人で請け負っており、その際は、源泉徴収票は生徒から発行されることはないため、証明として例えば「月謝袋」や「毎月の入金を示す通帳」など、なんらかの証明をしないと、これまた対象から漏れてしまうということもあるかもしれません。